COLUMN 01  間取り

「広いリビングがほしい」と
言われたとき、
私が最初に聞くこと

家づくりの最初の打ち合わせで、いちばんよく出てくる言葉です。おそらく上位3つには入ります。
そして私は、この言葉が出たとき、広さの話をしません。

代わりに聞くのは、「いまのお住まいで、家族がいちばん長くいる場所はどこですか」です。
たいてい、リビングとは違う答えが返ってきます。ダイニングのテーブル。キッチンの前の椅子。 なぜか、廊下の突き当たり。

広さは、目的ではないことが多い

「広いリビング」は、要望というより症状に近い言葉です。 いまの家で何かが足りていない。でもそれが何なのかは、まだ言葉になっていない。 とりあえず「狭いから」という理由をつけると、話が前に進む。だから広さの話になります。

実際に聞いていくと、出てくる理由はばらばらです。
物が多くて床が見えないだけ、という方もいます。家族の帰宅時間がずれていて、 いつも一人でテレビを見ている、という方もいます。来客のときに気を使う、という方もいます。

同じ「広いリビングがほしい」でも、答えは毎回ちがう。 広くして解決する人は、実はそんなに多くありません。

広げたことで、落ち着かなくなる家もある

これは実際にあった話です。20帖を超えるLDKをつくった家で、ご家族が結局いつも ダイニングテーブルの端に集まっている。ソファは使われていない。 理由を聞くと「広すぎて、どこに座ればいいか分からない」と言われました。

人が落ち着く場所には、たいてい背中を預けるものがあります。壁、家具、段差、天井の低さ。 面積を増やすと、それが減ります。広さは、居場所の数とは比例しません。

PHOTO / 床を下げたリビング
40cm床を下げるだけで、同じ空間の中に別の場所ができる

だから、最初に聞くこと

まとめると、私が最初に聞いているのはこの3つです。

ひとつ、いま、家族がいちばん長くいる場所はどこか
ふたつ、その場所の、何が良くて、何が不満か
みっつ、家族がそれぞれ別のことをしている時間は、一日にどれくらいあるか

この3つが分かると、必要なのが「広さ」なのか「居場所の数」なのか「音の分かれ方」なのか、 だいたい見えてきます。そこまで来て初めて、間取りの話ができます。

うまく答えられなくても、まったく問題ありません。 答えられないということが、そのまま設計の手がかりになります。

あなたの「広いリビング」の理由は、
まだ言葉になっていなくて大丈夫です。

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