家づくりの最初の打ち合わせで、いちばんよく出てくる言葉です。おそらく上位3つには入ります。
そして私は、この言葉が出たとき、広さの話をしません。
代わりに聞くのは、「いまのお住まいで、家族がいちばん長くいる場所はどこですか」です。
たいてい、リビングとは違う答えが返ってきます。ダイニングのテーブル。キッチンの前の椅子。
なぜか、廊下の突き当たり。
広さは、目的ではないことが多い
「広いリビング」は、要望というより症状に近い言葉です。 いまの家で何かが足りていない。でもそれが何なのかは、まだ言葉になっていない。 とりあえず「狭いから」という理由をつけると、話が前に進む。だから広さの話になります。
実際に聞いていくと、出てくる理由はばらばらです。
物が多くて床が見えないだけ、という方もいます。家族の帰宅時間がずれていて、
いつも一人でテレビを見ている、という方もいます。来客のときに気を使う、という方もいます。
同じ「広いリビングがほしい」でも、答えは毎回ちがう。 広くして解決する人は、実はそんなに多くありません。
広げたことで、落ち着かなくなる家もある
これは実際にあった話です。20帖を超えるLDKをつくった家で、ご家族が結局いつも ダイニングテーブルの端に集まっている。ソファは使われていない。 理由を聞くと「広すぎて、どこに座ればいいか分からない」と言われました。
人が落ち着く場所には、たいてい背中を預けるものがあります。壁、家具、段差、天井の低さ。 面積を増やすと、それが減ります。広さは、居場所の数とは比例しません。
だから、最初に聞くこと
まとめると、私が最初に聞いているのはこの3つです。
ひとつ、いま、家族がいちばん長くいる場所はどこか。
ふたつ、その場所の、何が良くて、何が不満か。
みっつ、家族がそれぞれ別のことをしている時間は、一日にどれくらいあるか。
この3つが分かると、必要なのが「広さ」なのか「居場所の数」なのか「音の分かれ方」なのか、 だいたい見えてきます。そこまで来て初めて、間取りの話ができます。
うまく答えられなくても、まったく問題ありません。 答えられないということが、そのまま設計の手がかりになります。
